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行きの車の中で悲劇は早々に起きた。
「左近、おれはきもちわるいのだ」
助手席に座っていた佐吉がおそるおそる口を押さえる。
「な、ちょ、殿、酔ったんですかい?」
「何!それはいかんな、佐吉!私を見るがいい!
義の心に溢れた義士はどんな車に乗っても決して酔わんのだ!さあ佐吉も義の心について…」
「だー!ちょっと黙っててくださいませんかねえ。殿!吐きそうですかい?」
「そう、大一大万大吉という言葉がある!」
与六の演説をバックに、真っ青な顔で頷く佐吉。
「馬鹿め!儂は厠に行きたいのじゃ!」
これは色々やばい。左近は慌ててハンドルを切るとコンビニに向かおうとした。
「さきちどのはしんでしまうのですか?!しなないでくだされ、さきちどの!」
と今度は後部座席からけたたましい泣き声。
「大丈夫だ佐吉!謙信公から受けし薫陶を思い知るがいい!
気持ち悪い時は呼吸法だ!それ、ヒッヒッフー!ヒッヒッフー!」
それでも佐吉なりに与六の言うことを信頼し、早速指示に従おうとした結果。
「ひっひっふうー、ひっひ…うげええええ」
「ちょ、殿!…あー、間に合いませんでしたか…」
「さきちどのがーさきちどのがしんでしまいまするー!」
「大丈夫じゃ、佐吉なぞ死んでも儂がおるではないか、弁丸」
その後、色々な処理などに手間取った左近の車は、予定より随分遅れてやっとの思いで動物園に到着したのである。
やっと到着。で、どうしようか…。
正直、一番書きたかったの、この殿なんですよ…。