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今日はいいふーふの日ですね!
つまりダテサナの日ってことですね!(曲解)


そんな訳で夫婦ネタを書こうと思ったのですが、本当に夫婦の話にしてしまい、しかもきちんと描写はないけど、これ幸村は完全ににょたですねと自分の中で歯止めが利かなくなった挙句、ちょびっと暗めの話になったので、こっちにひっそり上げておくことにしました。

よろしければ続きから。

だから皆結婚するのだと思っていました。

寒い寒いと大騒ぎしながら布団に潜り込んで、またその布団が冷たいとじゃれあいながらぴったり寄り添って、体温が伝わり出した布団の中でやっと足を伸ばした政宗に、幸村がそう呟いた。

こうやって何でもない日常を共に過ごす為に。日常というのはとても儚すぎるので、共に生きていく保障がないと心から笑うことさえ出来ない。
その保障を作ってくれるのが結婚という関係だと思ったから。




幸村の独白を政宗は黙って聞く。

「私は好きとか愛しているとか、そういうことを言うのが多分苦手です」

その昔、政宗の一世一代のプロポーズを受けた幸村は、そう言って政宗を苦笑させた。
何が多分じゃ。そんなこと見ておれば分かるわ。


「でも、ちゃんと考えます。政宗どのが私にくれる言葉を無駄にしないように考えて、そのことはちゃんとお話しますから」
政宗どのは、それを聞いてくださいね。当ってても間違っていても、まずは聞いてください。

そしてその言葉通り、幸村はたどたどしいながらも、ちゃんと気持ちを言葉にする努力を続けている。
ただ簡潔に、好きだとか愛しているとか甘い言葉に逃げて曖昧に微笑む訳でもなく、或いは不安だと一方的に誹る訳でもなく。
幸村がゆっくりゆっくり水を汲み上げるように気持ちを掬い上げ、それに言葉をつけて話すのを、政宗は静かに聞く。上手く話せないと幸村が途方に暮れる時も無い訳ではないが、政宗に、というよりどちらかというと自分自身に語り掛けているような幸村の話は、とても心地良い。
とりわけ、こうしていつもより早い時間に布団に包まって、幸村の声に耳を傾けるのは。


寝物語というのは、本来こういうものであったのかもしれない。政宗は相槌を打つ代わりに幸村の手を軽く握る。



「一緒に居ることを法律が約束してくれるならそれは何て心強いんでしょう」

責任とか立場とか、そういうものは差し置いても、隣に居れるという権利。或いは、想いが薄れてなくなっても隣に居らねばならぬという義務。
そんなもので雁字搦めにされたらさぞ気持ち良いだろうと思っていた。


恋愛と結婚は別物だ、だって現実が付き纏うのが結婚でしょう?
そんな風に言うけれど、政宗に繋がる現実に絡め取られて生きる覚悟なんて既に出来上がっていたし、それは幸せなことだと思った。

だが実際、共に暮らし隣に立つ権利も義務も手に入れて、それが如何に薄っぺらいものか思い知ったのだ。
何気ない日常の儚さは、どう足掻いても変えられなかった。恋愛と結婚が別?なんて夢のような話。


変わったのは戸籍だけで、煩わしいまでに確固たる現実など何処にもなかったし、そもそも未だに不安は消えない。


どうか理不尽な何もかもが自分と政宗を襲わぬよう。そんな心の狭い祈りを真顔で捧げる自分が嫌だった。
結婚すればそんな身勝手な願いも消えると思っていたのに。




「私は最期まで政宗どのと一緒に居られるってだけなんです。そう、どちらかが死ぬまで」

そう言って幸村が黙りこくった。
その日が五十年後なのか、それとも明日なのか、そう口にしたくはなかった。


「共に居るから」

幸村を抱きすくめながら政宗が言う。約束する、と。
一寸どころか一分先だってきっと闇で、知り得ぬ未来の約束なんか何の意味もなくって、人の気持ちなどどうせ変わってしまう。
そう詰る気にはなれなかった。


政宗の背中に手を回したら、暖かくって涙が出た。

「大丈夫じゃ、儂は共に居るから。お主の大切な者は、ずっとお主の傍に居る」

こんなに不安だと言っているのに、それらしい上手い言葉をい並べて煙に巻くことも、諦めて放り出すことも出来ぬほど、政宗は自分のことが好きなのだ。
自分達と、せいぜいその周りの人達。世界の欠片にすらならぬ、そんなちっぽけなものの為にだけ真剣に祈る覚悟を、政宗は疾うに決めていたのだと思う。
身勝手だろうが、心が狭かろうが。


「私も、共に居ります。ずっと」

それは、必ず破られざるを得ない約束であるからこそ、縋ることが出来る。
大事な者の隣に立つ権利と義務が消えて無くならぬよう祈り続けることを、努力というのではなかったか。かつて自分が皆に祝福されて政宗と誓ったのは、そういうことだった筈。


どうか、どうかあらゆる不幸が自分と政宗を、それから自分達の大切な人々を襲わぬよう。そう願うことを忘れぬよう。

「あなたと結婚して良かった」

そう言ったら政宗が笑いながら頬にキスしてくれた。
五十年経っても百年経っても、これだけは多分忘れまい。


幸村はそう思って笑いながら眸を閉じたのだが、その所為で零れた涙はやっぱり暖かかったのだ。

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