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折角のお休みでしたが睡魔を抑えきれずに結局一日昼寝してしまいました。眠っても眠っても眠い。今は春?
そしてついでに悪夢にうなされました。
昔の仕事の内容で、必死こいて「やべ!間に合わね!」とか言いながら編集してる夢でした…。な、懐かしい。私はテストの夢はあまり見ませんが(家人はよく見るらしい)、仕事で切羽詰ってる夢は良く見ます。
が、昔住んでた風景とか道の感じとか、電柱に貼ってある広告的なものとかお店の開店時間(多分当ってる)とか、奇妙にディティールに凝っていて、人間意外に色々なことを覚えているものだと感心。
大体出てきたお店なんて一回しか行ったことなくて、しかもそれが前の仕事の関係でお邪魔したというとこだったんだ。何故今更?
そういえば以前真田家と野良猫のネタを書いたのですが(あんなの話じゃなくて唯のネタだ)、ふと三成だったら猫より犬だろうなと思ったので、わんこと佐吉のネタを書いてみました。
…途中からさり気なく三成が佐吉になっていることに最早誰も突っ込むまいて。
小さな佐吉の自慢の一つが、いつもごろごろ昼寝したりちょこんと腰掛けて欠伸したりしている、石田家のもこもこの犬だった。
佐吉が物心ついた時から、彼はずっとこうして毎日を石田家の裏庭で過ごしている。
佐吉の兄が生まれるより前からこの家に居たそうで、「もうおじいちゃんなんで可愛がってあげなきゃ駄目ですよ」そう左近に言われるまでもなく、佐吉はこの犬に並々ならぬ愛情を注いでいるのだ。
…ただ、ちょっと名前がいけない。「コロ」というのだ。
犬にコロ。
こんないぬいぬしいなまえじゃなくて、もっとほんきでかんがえればよかったのだ!と左近に噛み付いたら「俺が決めたんですが、何か変ですかい?」ときょとんとした顔で言われ黙らざるを得なかった。左近だったらしゃれたことをかんがえられなくてもしょうがない、と佐吉は思う。
コロも、別段不満はもってないようだし。
そんなことを考えながら、佐吉はいつも家の裏でこの気のいい老犬と一緒に遊ぶのだ。
そんな佐吉とコロの静寂のひと時は、与六の叫びで(いつものように)引き裂かれた。
「佐吉い!いいいい犬だぞ!何と恐ろしいのだ!」
「なにをいうのだ、与六。コロはおとなしいやつだぞ」
本当は、金切り声でそう叫ぶお前に比べたらどんな生き物も、いや猛獣とて可愛いものだ。そう言いたかったのだが、如何せんボキャブラリーが貧困な子供ので断念せざるを得なかった。
「犬は噛むと言う!その犬も噛むか?!噛むのか?!」
「…いや、かまぬが」
「噛むのか!噛むのだな!なんと恐ろしい獣だ!私も噛み返した方が良いかな?!」
いきなりの闖入者に愛犬を獣扱いされ「噛む噛む」と連呼され、むしろ犬を噛んでやると宣言されたのだ。これで怒らない飼い主などいない。
くそ、せっかくおれがたのしくすごしていたのに。
だが犬と一定距離を保ったまま叫び続ける与六に、佐吉はふとあることを思いついた。
「与六、きさま、まさかいぬがこわいのか?」
そりゃ、佐吉だってうーうー呻る大きな犬は怖いけど。こんなにもこもこで大人しいコロに近付きもせず遠巻きにきゃんきゃん吠えている与六の姿を見たら誰だってそう思うだろう。
「…きさまにはかむかもな」
ぼそりと呟いた佐吉の台詞に、与六の動きが一瞬止まる。
「不義!ああ、なんたる不義か!友と、何よりこの私が獣の毒牙にかかろうとしているというのに、どうすることも出来ぬのか?!」
相変わらず後ろでは与六がぎゃーぎゃー騒いでいたけど、それ以上近寄ってくる気配はない。与六に背を向けた佐吉は、小声で、隣を歩く老犬に囁いた。
「なあ、コロ。おまえ、ばんけんをしてみたらどうだ?」
かくしてこの日以降、裏庭のコロの小屋は門の脇に移され、与六の急な来訪に頭を悩ませることもないと佐吉はほっと一息ついたのだが。
「佐吉!さーきーち!義を説きに来たが犬が私の行く手を阻むのだ!この不義の徒を何とかしてくれ!聞こえているか、佐吉!」
門の前から姦しいことこの上ない。しかも与六の声に刺激されたのか、コロが、そして近隣の犬達が一斉に遠吠えまで始める始末。
「何だこの禍々しい声は!そうか私の義に恐れをなして仲間と共に私を噛もうと言うのだな!畜生に怯む私ではないぞ!謙信公の毘と私の義!どのくらいものか見せ付けてやらねばならぬようだな!」
救急車が通った時ですらこうはならないであろうくらいに響く遠吠えと、威勢だけは良い与六の叫びに頭を抱えながら、佐吉は忌々しげに立ち上がった。
「…あのばか…きんじょめいわくではないか…」
こうしてコロの住まいは再び石田家の裏庭に移され、与六の来訪にうんざりする佐吉の毎日は相変わらずなままなのである。